
- あらすじ
- 古来から鬼、妖などと呼ばれ人に害をなす異形のものを退治するため、超常的な力を持つ異能者が生まれる特異な家系が連綿と続いてきた。斎森真一と薄刃澄美は異能者の家系同士の政略結婚であったが、長女の美世は異能を持たない。美世が2歳の時、母親が亡くなり、父親が香乃子と再婚し、異能をもった異母妹の香耶が生まれたことから、美世の居場所はなくなる。父親からも見放され、良家の子女としての教育も受けさせてもらえず、虐げられ、使用人以下の扱いを受けながら19歳になった美世は、すべてを諦め笑うことを忘れていた。
- 美世の理解者であった辰石幸次が婿養子として香耶と婚約したことを機に、美世は異能者の家系で最高の名家とされる久堂家の当主・清霞の婚約者候補として斎森家から追い出される。母親の形見はすべて取り上げられ、美世は唯一の余所行きの着物を身に付け、郊外にある清霞の質素な住まいにたどりつく。通いの使用人のゆり江に案内され挨拶をするが、清霞の美貌に目のやり場に困る。清霞は「ここでは私の言うことに絶対に従え」と言う。美世にとっては今までと同じことであり、「かしこまりました」と即座に了承する。
- 美世はいつも通りに暗いうちに起き出し、朝食の支度をする。清霞から席について先に食べるよう言われ、美世が躊躇していると「毒でも盛ったのか」と意外な言葉が返って来る。清霞が帰宅すると、美世は朝食の件で謝罪を繰り返す。清霞は美世が今までの令嬢たちとはまったく違っていることに気付き、明日の朝食を作るよう依頼する。清霞から「美味い」と言われ、美世は嬉しさのあまり涙が止まらない。傷んだ着物を身に着けて痩せ細った不健康そうな外見から、美世が令嬢らしい育ちをしていないのではと疑問を抱いた清霞は、斎森家を調べることを思い立ち、ゆり江にも彼女のことを気に留めておくよう頼む。美世の依頼で綺麗な針箱を部屋に届けたゆり江は、粗末な普段着を繕う美世の様子を陰でそっとうかがう。
- 美世を伴って清霞が街に出かけるというので、美世はゆり江に化粧をしてもらう。久堂家御用達の呉服店「すずしま屋」の奥の間で、女主人の桂子と清霞は美世の着物を見繕う。清霞は美しい桜色の反物を含め何枚かの仕立てと帯や小物も依頼する。桂子は上質な櫛が入った小箱を手渡し、改まった様子で「あのお嬢様は原石であり、計り知れないほどの伸びしろがあります。磨けばお坊ちゃんとそん色のない美人になります」と告げる。清霞が奥から店頭に戻ると、美世は桜色の反物に見入っている。それは、亡き母の一番大切な形見を思い出させるものであった。
- その晩、美世は風呂から上がり、部屋の前に置かれた櫛の小箱に気が付く。美世は飛んできて「こんな高価なものはいただけません」と言うが、清霞は「気にするな」と取り合わない。美世は嬉しさの余りほんのり微笑み、お礼を口にする。その無垢の微笑みは清霞の心を揺さぶる。清霞は斎森美世について調べられた報告書を入手し、美世が些細なことで謝罪を繰り返し、笑うことさえできなくなった理由を知る。しかし、幼い頃から女性不信を植え付けられてきた清霞にとって、美世は数少ない一緒に暮らせる女性であった。
- 高価な櫛を贈られ、美世はお返しに組み紐を作ることにする。材料を買いに出かけたとき、香耶に出会い、恐怖のあまり固まってしまうところをゆり江に見られ、深く傷つく。その頃、清霞は斎森家を訪ね、美世との結婚を口にし、美世に面と向かって謝罪することを要求する。斎森夫妻はひどく苛立つ。清霞が斎森家を出ようとしたとき、香耶が戻り、清霞の美貌に衝撃を受ける。清霞が帰宅すると、美世はなにやら様子がおかしく、すぐに部屋に引きこもる。ゆり江から事情を聞いた清霞は、あのときの無垢の笑顔が見たいと切に思う。
- ゆり江は、女は愛されて自信をつけるのですと助言する。美世はつらく苦しい斎森家で、唯一自分の味方をしてくれた使用人・花の突然の訪問を受ける。幼い美世の窮地をかばったために解雇された花は「お嬢様」と呼び、清霞から手紙を受け取ったことを話す。美世は組み紐を手に取り、清霞にすべてを打ち明け、謝罪し、せめてものお詫びと感謝の気持ちとして組紐を差し出し、頭を下げる。清霞は美世の頭を抱えるようにして、「正式に婚約したいと思っている」と話し、「嫌か」とたずねる。美世は頭が真っ白になりながらも、「わたし、ここにいたいです」と精一杯の気持ちを伝える。
- 初夏の頃、「すずしま屋」から桜色の着物が届く。宝物であった母親の形見に似た着物を贈られ、美世の喜びは尋常ではない。真新しい着物を身に着け、夢の中の母親に似ていると感じる。桂子の言った通り、栄養状態と精神状態の改善された美世は綺麗になっていき、清霞も思わず「綺麗だな」と口にしてしまう。そんな中でも、清霞は美世が悪夢にうなされているのに気付く。美世の肩を揺さぶり声をかけると、目を覚ました美世は体を丸めるようにして泣き出す。清霞は美世をしっかり抱きしめる。
- 自分こそ清霞にふさわしいと妄執する香耶は、薄刃家の血筋を狙う辰石実に相談し、美世を拉致し、斎森家の蔵の中に閉じ込める。美世は手足を縛られ、蔵の中で香乃子と香耶に暴力を振るわれ、清霞との縁談を断るよう責められるが、きっぱりと拒否する。斎森家に到着した清霞は門を雷で破壊し、幸次とともに蔵の方に向かう。実の異能の炎は清霞の結界に阻まれ、屋敷内に燃え広がる。拒否を続ける美世の首に香乃子の手がかかったとき清霞が現れる。清霞は美世を抱き上げ、幸次は香耶を連れて火の回った斎森家を脱出する。
- 自分を呼ぶ声に意識を取り戻すと、美世は自分の部屋におり、清霞とゆり江が傍にいる。斎森の屋敷は全焼し、両親は地方の別邸に移るという。辰石家の当主は隠居し、新当主は久堂家の監督の元に置かれる。美世は斎森家の焼け跡に残った桜の切り株を訪れ、亡き母にお別れを告げる。結納の話で清霞が美世への謝罪を要求した話を聞かされ、美世はとてもうれしいと口にする。清霞からの求婚に、美世は笑顔で末永くよろしくお願いしますと答える。
- わたしの幸せな結婚
- (わたしのしあわせなけっこん)
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